2024/11/10 01:01
街に住んでると。
どの家畜も遠いものだから、あんましピンとは来ないのだけども。
洋服の素材として定番のウール。
その毛を刈る羊は寒冷で乾燥したエリアの生き物だから。
湿度が高く温暖で四季のある日本国内では育ちにくいらしい。
そのため。
国内の養羊の歴史は江戸時代に個人レベルで頓挫。
明治維新あたりで大久保さんが奮起して、千葉あたりでトライアルするも尻すぼみ。
転機は日露戦争の頃、軍需拡大で国内でも真面目に毛織物しよーぜとなり。
紆余曲折あって。
毛織物の産地として、イタリアのビエラ,イギリスのハダースフィールドに続く尾州に至る。
けれども原毛の話となったらば。
代表格のメリノはスペインから広がってオーストラリアやニュージーランド。
心くすぐる、シェトランドやブラックウェルシュマウンテンとかとかはイギリス。
ロマンがあるのはアイスランディックシープかなと。
その中で。
ウールとしての国産羊毛ってあんまり聞かないなぁと思いつつ、養羊の国内拠点は北海道か。
ジンギスカン有名ですし。
ラムチップ美味いし。
羊毛より食ってるなぁと思ってたら、羊毛から羊肉への転換の60年代くらいに始まり。
それに伴って。
羊毛工場も軒並み羊肉工場へ大きく舵を切ったらしく、いまは羊毛は輸入100%だそう。
まぁ、綿にしても亜麻にしても状況としては大差なく。
主に面積、それから諸々を考慮したらそんなもんだろうねと思わんでもない。
それでも。
大和綿が...とか、三河木綿が...などと、同じように1%未満の内容があるかしらんと思ってたら。
原毛の洗浄で一般的におこなう化炭処理で発生する廃液を日本国内では流せないために使用できないのが理由で、日本の工業製品としての羊毛産業は100年足らずで一旦幕引きとなったとのこと。
そんなこんなで完全に羊肉産業へ転換した国産の養羊場。
全盛期からの件数や頭数などは減るものの。
ちょっとしたブームの後押しと。
和牛のノウハウなんかも活かしつつ牛よりも小回りが効くからと、高級食材としてブランド化されて、北海道以外の山間部でも育成されるように時代にあわせて変化し盛り返してきているとのこと。
もっぱら日本で飼育されているのはサーフォークという種類の羊。
美味しいというのが理由なのだろうけども、比較的雨量の多いエリアの羊と伝統的な家畜羊を交配させた種ということもあって、雨の多い日本でも比較的育てやすいのかなと。
そうした食肉が主体の羊であっても、もとは毛を得ることを目的とした家畜。
羊の健康のためにも年に1度は毛刈りが絶対に必要。
そうすると。
若い羊だと1頭あたり2kgくらいの羊毛が取れる。
それも手塩にかけてる分だけ確りと良質な羊毛が。
勿体ないというのあらんでもなかったのだろうけども、処分してしまうには惜しいくらい良い品質だからこそ。
いま広く世界で使われてる薬剤が国内で使用できないなら、国内の規格にあった洗剤の開発からしてしまへと。
長野の農場と国内の工場がタッグを組んで天然由来の洗剤の開発から、原毛の洗浄と紡績まで正真正銘の純国産のウールを作りました。
時間を掛けて洗浄し、カーディングをして、汚れや藁くずを取り除いていくけども、化炭処理のように硫酸で脂や藁くずを焼き落とすのではないので、そこそこ夾雑物の残る懐かしいウール。
それを昔ながらのガラ紡でゆっくりと膨らみを保って撚ることで、本来の脂分のある保湿性の高さと、ブランド羊ならではの育ちの良さを感じる毛糸に仕上げてます。
Knit cardigan ( Col. grey, Size. 1, 2 ) 49280yen with tax / PETTY
その毛糸で編たてたニットは、流行りのカシミアライクなウールとは違う、懐かしい匂いと肌触り、何よりもウール本来の暖かさがあり、ブラックシープやシェトランド,アイスランディック好きな人には間違いなく刺さる洋服です。
ただ記憶にあるそれらほど粗野では無く、服の分量にたいする軽さとモチモチとした触感が決定的に違う。
このあたりは工程の違いもあるだろうし、日本で育った羊という環境的要因も強そう。
デザインはざっくりとした一見シンプルに見える畦のカーディガン。
Vゾーンが狭くナット釦の間隔が詰まったクラシカルな雰囲気に、袖の切り替えのリブはやや長めの細め。
両脇のパッチポケットはサイドから手をいれるウォームポケットと2重の構造になってます。
裾をリブにしていないのでストンとシルエットが落ちるので、ボリュームのあるパンツやトラウザーズとの合わせがすっきりします。
糸に残る藁くずが馴染んでいくことで、クラシカルなデザインとあわせて良い表情になっていくのが想像できる洋服。
今日の晩くらいの気温ならジャケットの代わりに。
もう少し寒くなったら一重のジャケットやコートの中に挟んでと、冬のスタイリングに活用して欲しい一着です。
件の長野の牧場には大体400頭くらいの羊がいるとのことだけども。
カードで削ることや。
編み地の端が出るコトを考えて、ざっくり雑に1頭から1着分くらいと思うと、とても稀少。
だからこそ。
同じように大事に羊を育ててる他の牧場の羊毛も、毛糸になってくれたら良いなと思いつつ。
そうなったら尾州の織だけではなくて、羊毛の産地としても注目される日が来るポテンシャルを感じます。
なによりも。
冬らしい風景に馴染むカッコいい洋服に興味はありませんか。
折角。
寒くなってきたことですし、袖を通しにいらしてください。
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